竣工写真というものは設計者にとって非常に大切なもので、これがないと実績が見えませんし次のクライアントにつながらないのです。
私は設計をおこなった建築物や空間の写真を自らカメラを持ち込んで撮影しております。
プロカメラマンの方に撮影をお願いしない理由は特にこれと言ってないのですが、当時初めて設計をした住宅が出来上がったタイミングと同じ時期にデジタル一眼レフカメラと広角レンズを購入したため、旅行に持っていくだけではもったいないですし、折角なので試しに自分で撮影をしてみようと思ったのが始まりです。それ以後なんとなく撮り続けております。
ただ建築物は約1年から2年、物によってはもっと長い時間、エネルギーや想いを込めて設計し、そして現場に通いつめて作り上げてゆくものなので、完成をし最後に撮影をするこの瞬間は、建築や空間が生まれ(物質としての完成)、そして少し大袈裟ですが巣立って行くというか(設計者から離れる)ような感覚にとらわれるのです。なのでこの撮影の時間というものは自分の中での一つの区切りの儀式みたいなものになっております。
最後に建築物や空間の中に生気や時間を吹き込むのは、住宅であればクライアント、商業施設であればオーナーやゲストになるわけですが、その皆さんと共に建物自体も素敵に歳を重ねて欲しいなと思いますし、いつまでも心地良い空間としてクライアントや訪れる方を包容してほしいなと、そんなことを考えながら撮影をしております。
勿論引き渡したら、はいサヨナラってことではなく何かあればすぐに駆けつけますし、まれに状態が気になりふらっと前を通ることもあります。
また当然のことながらデジタル一眼レフカメラと、画像編集ソフトのおかげでなんとか素人レベルでも撮影が行なえる訳で、プロカメラマンではありませんので、実際すさまじい枚数の写真を撮影しております。そしてその中で使えるなと思われる写真が極数枚がかろうじてあるかなというレベルです。
ただ撮影をすること自体が精神的にも肉体的にも相当な労力を要しますし、編集にも相当な時間がかかります。費用対効果を考えると本来は信頼できる感性の合うプロカメラマンにお任せした方が良いのだろうなと正直思っております。
やはり所詮アマチュアですし、その分野にはその道のプロがいらっしゃると思うわけです。