| カメラ

いつの間にか増えたカメラ。 20代の頃は全く写真を撮る習慣がなく、旅先や訪れた建築に関しても、五感で感じるまま身体や脳裏にイメージ、体験として刻もうと、決して忘れることはないと本気で考えていました。
その頃手元にあったのはかなり古いコンパクトデジタルカメラで、その解像度は300万画素程度だったと思います。多分その頃には1000万画素のものが主流だったので、かなり古いものだと思います。
そして30歳の頃、そのカメラを旅行に初めて携帯してみたのですが、思いのほか写真を撮ることが楽しいことに気づくこととなりました。
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結局、建築設計を仕事としているので、その物体や空間を演出する最大の要素はある意味では光と影だと言っても過言ではないようにも思っており、写真もまた、成果物としては平面の2次元のものとはなりますが、その中身はと言うと、やはり光と影の表現なのだろうと思っております。
何より月日が流れても、その瞬間に撮った写真の中にはその一瞬の時が刻まれており、その写真1枚が鍵となり、その時々の風景や、物事が連鎖的に思い出されるのです。人間の記憶能力は大したものではないことを改めて思い知ることとなりました。

合わせて特に建築物の写真撮影が楽しくなった理由として、これも時代の流れではあるのですが、デジタル機器であるカメラ、コンピューター、そして編集ソフトの発達により、アナログの時代では素人には撮影が不可能であったであろう、建築写真(解かりやすく言うとあおり補正がなされ、水平垂直がきちっと通っている写真)が割りと簡単になんとなく作れてしまうということです。今では機材にもそこまで費用はかかりませんしね。
以降、ニコンの一眼レフカメラを購入し、広角レンズ、望遠レンズ、マクロレンズが増え、ISOの進歩によりもう1台一眼レフが増え、現場監理や持ち歩きに便利ということでGRを追加しました。GRにはオプションで広角レンズも装着できるのでとても便利です。

撮影時、勿論構図を決めることや、マニュアルでの露出調整、シャッタースピードなど、とても難しいのですが、それよりも、その場、その瞬間の空気感を撮影するということが非常に奥が深く、本当に難しいなとあ日々感じております。そして行き着くところ最後はやはり感性の世界なんだろうと思います。
とても空気感のある写真や、構図など全てにおいて隙のない写真を目にしたとき、その美しさや素晴らしさに感動するのと同時に上手いなとつい溜息が出てしまいます。
また旅行で風景や町並み、自然などを感覚的に撮りながら歩いている分には良いのですが、建築を訪れる際には、まずカメラは構えず五感で十分に建築のもつ空気感や、設計者の意図を感じた後でカメラを構えるようにしなければいけないなと最近になって思うようになりました。どうしてもカメラを手にしてのファーストインプレッションとなると、写真としてどういう構図で切り取りたいのか、或いは光と影にばかり気が取られ、まずは直感的に感じなければいけないその建築や空間の本質を見過ごしてはいないだろうかと思うわけです。
やはり一人間として、設計者として身体全体で感じる最初のインスピレーションを大切にしたいなと思っております。

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